大都会から小さな海辺の暮らしへ

救出できなかった腕時計

ライフセーバーの監視活動が終わった夕方5時だった。
朝から浜辺にいた私は、体もぐったり、心もずっしり、頭はぼんやり。

一緒に監視活動をしていた仲間と海へクールダウンしに行くことにした。
この時期にめずらしい大量のクラゲが昔手首に絡まって痛かったのを思い出させてくれた…

なぜか、沖に出たときにその記憶がよみがえった。
だからすぐに時計を外した。

その瞬間、手からスルッと抜けて時計が海の奥底に落ちていった。
「やっべ!」って思ったけど、潜ればなんとかなると少しの間、思っていた。

大都会から小さな海辺の暮らしへ

そんな軽い思いはすぐにぶち破られた。
梅雨の真っ只中、夕方のどんより雲でとにかく暗い。水深は約8m。
ここ最近、雨が続いていて海中も濁っていた。

潜りは得意だけど、暗い海は怖い。
何度か心を決めて海底に潜ったけど、潜っただけで探すなんてできない。
何か出てきそう。恐怖感で息も続かない。

海やプールが大好きだから防水時計を10年前に買った。
色も大きさもデザインもかなりのお気に入りで、時計の針が一度も止まったこともなかった。かっこいいー!って何度も褒められた時計だった。

その時計が一瞬でなくなった。

10年間ありがと!って思うのはきれいごとのようだけど、そんな気持ちになった。
怖い海の状況を見せられたからスッと諦めもついた。
海にいる私はなんだか心が落ち着いている。冷静でいられる、不思議な海の感覚。

でも、海から上がったらすぐに心に誓ったことがある。
「海に大事なものは持ち込まない。」やっぱり落としたことを悔やんでいる自分。
海マジックが一瞬で解けた自分に可笑しくなった。

不自由な女神 ともまい

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